ジャガイモの栽培
ジャガイモの栽培について、畑の準備から植付け、発芽、成長、収穫、保存までをまとめてレポートします。
複数年に渡って撮影した写真資料や経験を取りまとめます。ジャガイモは年1回の栽培で、通年食べられるので、価値のある野菜です。
ロシアでは通貨危機の時、「ダーチャ」(個人農園)で作ったジャガイモが食糧として流通したことに加えて、物々交換の基準になり得たそうです。
里山モノジロウの家では、20年以上に渡り「男爵」を、栽培しています。
栽培は春先に植えて、初夏に収穫する年一回です。秋収穫は初夏の収穫に比べて味が落ちるようです。 種芋は、種苗店で入手します。畑は前年の11月ぐらいに一度、トラクターで起こしておきます。冬の北風に当てて置くと病害虫を少なくし、凍結を繰り返して土の団粒化を促すので良いとされています。
この地域の、植付け時期は3月ですが、里山モノジロウの家では2月中頃に、植え付けています。
これまでの経験で、3月以降では、土が乾燥する可能性が高く、雨の少ない年では成長が遅れて、収量が上がらないことがあるためです。 寒いながら発芽するまでの間、太陽光でシート内の温度を上げ、地中の温度蓄積を促して安定した発芽を目指します。
またこの方法だと発芽後の成長が早く葉が広がります。そのため、早めの植付けをしています。発芽率は毎年95%以上です。(今年は発芽しなかった種は192個中、3個でした。98%!)
植付けの2週間前には石灰を撒いてもう一度トラクターで起こします。種芋は10㎏注文(例年は15㎏)。植付けの2日前に種芋の準備です。
大きい種芋は芽の位置を分けるように切って、草木灰を付けて日陰に一日置きます。味噌づくりで大豆を煮た、竈(かまど)の灰を使います。
植付けの「七つ道具」を積んで畑に向かいます。
幅が1.5mのマルチに2作植え付けます。耕運機に倍土用のアタッチメントをつけて、「作切り」と「土かけ」を同時に行う方法で植付けます。
倍土器は溝を作りながら左右に土を押し分ける機能があるので一度目の作切り(往路)で出来た溝が畝の片側の傾斜になります。すぐ隣で(復路)の溝を切るとそのくぼみが1作目の植え溝となります。
地中にはジャガイモの表面ザラザラにする雑菌がいるので消毒します。この消毒をしないと肌が滑らかになりません。
次に種芋を30センチメートル間隔に落とします。芽の向きを上、下の議論があるようですがどちらでも芽は出ます。種芋の間に化成肥料をひとつかみ落とします。
耕運機で2回目の往路で1作目の土かけと2作目の溝切りをします。2作目の溝に消毒、種芋を置き、肥料をしたら2回目の復路で2作目の土かけとなります。
都合、2往復半で2作分の植付けができます。2作分の畝の上部を平にして、畝の周りの溝を整えます。次に黒マルチを掛けて土を被せます。
これで1マルチシート、2作の植付けが出来ました。10㎏の種芋だと3マルチシート、6作分の植付けが出来ました。黒マルチシートの下で2月中頃から3月の間、保湿しながら地温を少しずつ上げていきます。
この時期はまだ、霜が下りる確率が高いです。
2021年はさくらの開花が平年より2週間ほど早くなりました。ジャガイモの植付け時期は例年通りでしたが、発芽が2週間程早くなりました。
発芽時は、黒マルチが掛かった状態ですので、発芽した芽は黒マルチに突き当たり、陽が当たると表面が高温になるため焼けてしまいます。
発芽と同時に黒マルチを破りに、来られればいいのですが、今のところ週一回の見回りですので発芽後、数日間放置されるので確実に焼けます。
しかし、先端が焼けても、芽に勢いがあり、新しい芽が出てくるので大丈夫です。今年の黒マルチは適当に敷いたので“ゆるゆる”になっていましたので、発芽した芽がマルチを押し上げる余裕があり、中で10センチぐらい成長しました。
風に煽られてバタバタしてしまいますが、マルチはゆるゆるで張った方がいいかもしれません。マルチ内で陽が当たらず白かった茎は、一週間後は緑色になっています。
しかし、今年は4月に入っても霜が降りて葉先が焼けてしまっています。
これくらいだったら回復しれくれるでしょう。芽の本数が多いと小さなジャガイモの数が多くなるため3本程度にします。芽の多いところだけ抜き取ります。大きすぎるジャガイモは扱いにくいのであまり積極的な芽欠きは行いません。
その後も寒い日が続いているので成長はゆっくりです。 さらに今年は遅霜がありました。八十八夜の5月1日の前日、霜が降りて葉先が茶色に枯れてしまいました。2度目です
この位だと大丈夫だそうです。同じ環境でも隣の畑のジャガイモは霜で焼けたところとそうでないところがまばらです。この畑は霜が降りやすい地形にあります。北側が開けていて、高低差をもって広がっているので、北風を直接受けます。
このような霜が降りやすい地形が連なっているところを「霜道(しもみち)」と言うそうです。山と平地と川が複雑に入り組んだ里山特有の現象でしょう。
翌週は葉が元気に伸びています。地中では、すでにピンポン玉ぐらいのジャガイモが出来ています。
作間の草取り:
マルチとマルチの間には土の部分があるため、草が生えてきます。
これを放置するとジャガイモ以上に大きくなって害虫発生の要因となります。小さいうちに草取りをします。 久しぶりの雨模様、根元の土も湿って粘り気が出ています。試験掘り2回目、玉はテニスボールぐらいになっています。収穫までしっかり日光にあたって養分を貯めてほしいところです。
5月22日 試験収穫をして「じゃがバター」で食べました。
まだ少し水分が多いようですが、きめ細かさのあるジャガイモになっています。
一週間後、2回目の試験収穫。前回よりも味がしっかりしてきました。水っぽさが無くなり、ホクホク感があります。葉が枯れるまでもう少しです。
6月2日 まだ、葉が青いところが多いですが一部の葉が枯れ始まっています。ほかの畑のジャガイモはまだ青々としていますが、当家のジャガイモの茎は太く、力強く見えます。
6月9日 3回目の試験収穫。塩ゆでをしてバターで試食。コクが増している。試験収穫のたびに熟成が進んでいます。葉っぱは枯れ始まっていますが、茎の枯れが進んでいないので、収穫は2週間後か?
6月19日 梅雨に入って雨の日が多くなってきている。葉が枯れて、茎もほとんどの株で枯れてきています。梅雨の合間で晴れた日を選んで収穫します。
6月23日 収穫! 晴れ間を見つけて収穫作業となりますが、今週を逃すと来週は確実に雨模様なので、今日は、にわか雨の可能性が高いですが、本日、収穫を行います。前3日間は雨が降らなかったので土はあまり湿っていないようです。作業道具を積みこんで収穫に出かけます。
黒マルチを剥がしてから掘り起こします。このままだと残っている茎がマルチに引っ掛かって剝がしにくく、切れてしまうので、先に茎を根元から切り取っておきます。雨模様でなければ全て剥がしてしまいますが、雨が降ってきて表面の土が濡れてしまう可能性があるので、剝がしながら掘ります。
ジャガイモは手で掘れますが手掘りで探るのは時間が掛かり筋力も使うので、フォークを使って土をほぐして置いてから、掘り出します。ただし、フォークを刺すとジャガイモに刺さってしまうこともあるので注意です。刺す位置は茎から10センチメートルでは近すぎで、15センチメートルでは遠すぎの感じです。今回は2個、刺してしまいました。
途中、雨が降り出したので掘り起こしたジャガイモには、シートを掛けます。地中にある時以上の濡れ具合にはならなかったと思います。
収穫は全体で3時間かかりました。
一株あたりの収穫数は例年よりすこし少な目かも知れません。程よい大きさが多いので、出来としては良好です。
家に帰って納屋に下ろし、素早く空気に当てます。土がついているところがあるので自然乾燥させながら手で土を落としていきます。軍手で擦って土を落とします。どうしても収穫時に濡れてしまった場合や土が特に湿っている場合は、乾いた床に広げて扇風機で風を当てます。これまでこれらの対処方法で、腐ってしまったことはありません。
収穫の翌日、一日かけて土落としをして土間に囲いをして保存しました。光に当てないよう「ムシロ」を全体にかけて置きます。
この地方では、今年は不作だそうですが、当家はほぼ例年に近い収穫となりました。収穫量のばらつきは少ないようです。
実際は一株に9つぐらいとれるところ今年は8つぐらいでした。
作付量が、例年の15キログラムから、今年は10キログラムに減らしていますので、全体では例年の半分ぐらいになりました。
それよりも課題は「ネズミ」にかじられてしまうことです。土間があって、動物に対して密閉された空間を作るのは難しいので、工夫が必要です。
ネズミ対策にも取り組みます。時期をみてレポートしたいと思います。